歯の痛みの要因にはさまざまなものがありますが、一番はじめに思い浮ぶのが、むし歯ではないでしょうか。むし歯は大人でもなりやすい、口腔内の感染症です。
むし歯の原因はむし歯菌で、3歳くらいまでに周囲の人から感染することが多いといわれています。感染すると歯垢に棲みつき、食べかすなどの糖分を栄養源にして酸を出し、歯を溶かします。これがむし歯ではが溶けていく仕組みです。
むし歯は進行すると表面のエナメル質から内部の象牙質までを溶かし、歯の根の中の神経にまで影響を与えます。初期のむし歯では痛みはほとんどありませんが、重度になると激しい痛みを感じるようになります。
もし今痛みを感じているなら、早めに歯科医院に相談しましょう。
「歯周病は歯を失う原因第1位」と、多くの方がそう思われているかもしれません。
しかし実際には、虫歯の方が歯を失う直接的な原因となっていることが近年わかってきました。厚生省の調査によると、成人の実に9割以上に虫歯があり、40歳以上だけに絞ればこれまでよりも虫歯の数が増えているというのです。(※1)
虫歯は放置すると歯や歯並びを直接破壊し、時間をかけて生活や健康に多大な影響を及ぼしていきます。厚生省の行った実態調査によれば、40歳代半ばから歯を失う人が増えはじめるといいます。そして55~64歳では残っている自分の歯(残存歯)の平均数は22.4本、65~74歳では16.8本、75歳以上になると、わずか8.5本という驚くべき結果となっています。
(※1)厚生労働省「歯科疾患実態調査(平成17年)」より。
チェックが3つ以上の方…… 虫歯リスク高
チェックが1~2つの方…… 虫歯リスク要注意
チェックがゼロの方…… 虫歯リスク問題なし
唾液には歯を守るための様々な役割があります。雑菌から守る殺菌機能や、歯を修復する再石灰化機能などです。これらはお口の健康を維持するために欠かせないものですが、そもそも唾液の量が少ないとなれば、十分に機能できません。
唾液量は人それぞれ出やすい人とそうでない人がいますが、簡単なトレーニングやガムを食べて習慣化することで、改善することができます。
虫歯菌が繁殖するチャンスは毎日あります。特に食事の回数が多い方や、歯磨きの回数が少ない方は要注意です。基本的には完食の回数を減らし、正しい歯磨きをすることが大切です。
お口の中に食べかすが残ってしまうと、すぐに菌が繁殖し歯垢となって取れにくくなります。更に放置すれば歯石となって固まり、もう歯ブラシでは落とすことができません。また虫歯菌は糖分を元に歯を溶かす酸を作り出すため、甘い物はなるべく控えるようにし、食べたあとには水を飲んだり口をゆすいだりしましょう。
かみ合わせや歯並びは見た目の問題だけではありません。かみ合わせが悪いと一部の歯に余計な力がかかり、歯の抵抗力を弱めてしまいます。また歯並びが悪いと汚れが溜まりやすくなり、歯ブラシもきちんと届かなくなってしまいます。
また歯や唾液の質も重要とです。実は、歯の強さや唾液の質には個人差があります。これには遺伝的要因も関係しますが、日々のケアに少し工夫を加えることで改善する場合もあります。歯は食べ物や虫歯菌の出す酸によって一時的にもろくなりますが、唾液に含まれているミネラル分で再び強度を取り戻しています。これを再石灰化といいます。
この再石灰化力を高めるためにはフッ素が有効と言われており、すでに市販の製品でも多く取り入れられてきています。
C0 ごく初期の虫歯
歯の表面のエナメル質が溶けはじめ、白く濁っている状態。
まだ歯に穴はあいておらず、痛みなどの自覚症状はありません。
C1 エナメル質のむし歯
歯の表面のエナメル質がさらに溶け、黒ずんでいる状態。
冷たいものがしみることがありますが、まだ痛みはありません。
C2 象牙質のむし歯
エナメル質の内側にある象牙質までむし歯が進行した状態。
冷たいものや甘いものがしみるようになり、ときどき痛むこともあります。
C3 神経まで達したむし歯
神経までむし歯が進行した状態。
熱いものがしみるようになるほか、何もしていなくてもズキズキと激しく痛むようになります。
C4 歯根まで達したむし歯
歯の大部分が溶けてなくなり、歯根までむし歯に冒された状態。
神経が死に、痛みはなくなりますが、歯根部に膿がたまると再び痛みが出ます。
虫歯と歯周病はしばしば混同されがちですが、実際には全く別の病気です。基本的に虫歯も歯周病もお口の中の細菌によって起こるという点では同じですが、原因となる菌に違いがあります。その違いは、虫歯は歯そのものに虫歯菌が感染し、歯が溶かされる病気。歯周病は歯と歯ぐきの境目に歯周病菌が感染し、歯を支える骨(歯槽骨(しそうこつ))を溶かす病気です。
また痛みの観点でも違いがあります。虫歯は比較的初期の症状から痛みや違和感があり、歯の中にある神経まで進行すると激痛を感じます。しかし、歯周病はかなり進行しても痛みはほとんどなく、歯ぐきの腫れが相当にひどくなったり、出血がないと症状を自覚しにくいものです。
虫歯と歯周病の違いを理解して、それぞれ正しいケアを行いましょう。
当たり前かもしれませんが、とにかくまずは歯を丁寧にきちんと磨くことです。1日3回毎食ごと、できれば間食のあとにも磨いてください。お口に食べ物や汚れがある時間をなるべく短くすることで、虫歯の発生率はかなり抑えることができます。
またなかなか使い慣れない方もいらっしゃいますが、歯間ブラシやデンタルフロスのような、歯の隙間をケアする製品もぜひ使ってください。実際のところ、多くの虫歯は目に見えない隙間から始まっています。歯間ブラシやデンタルフロスは目に見えない隙間のケアに最適で、わずかに残った食べかすなどを取り除くのに大変有効です。
日々のケアにちょっぴりこだわるだけで、虫歯のコントロールに大きく役立ちます。
お口の中は食べ物がある時間の分だけ不安定になります。当然甘いものや歯にくっつくものであれば、その影響は大きくなります。基本的に間食はなるべく控えて、食べたとしても歯磨きやうがいをしてください。また睡眠中は唾液量が減少しやすく、お口の中の雑菌が活発になりやすいです。ここに食べ物や食べかすがあれば、すぐに歯垢となって虫歯の原因になります。
寝る前の飲食は睡眠にも良くないので、なるべく控えてください。
砂糖や蜜は非常に純度の高い糖分です。つまり、虫歯菌の大好物と言えます。現在砂糖以外にも新しい甘味料が開発されており、ガムに含まれているキシリトールもその一つです。
製品表示をよく見てみると、どのような甘味料が使われているのか記載されているので、キシリトールやステビア、アスパルテームなど、砂糖以外の甘味料のものであれば、虫歯菌の餌になりにくいでしょう。
またキシリトールは虫歯菌の活動を抑制する効果があると言われ、美味しく虫歯予防効果も期待できます。
ごく初期の虫歯に限り、唾液の働きによって修復されることがありますが、少しでも進行した虫歯はもう自然に治ることがありません。特に歯に穴が空いたり黒くなってしまった虫歯は、詰める・埋めるなどの処置が必ず必要となってしまいます。
こうなってしまうと見た目を損なうだけでなく、痛みがあったり治療費がかさんでしまう可能性も。そうなる前に、歯科定期検診を受けてください。大人になると人にお口を見てもらう機会が大幅に減ってしまうので、ぜひご本人から自発的に検診を活用していただけると幸いです。
当院でも定期検診のご相談を積極的にお受けしておりますので、ぜひ一度ご相談ください。